今年で６年連続の来道となるＹ氏ご夫妻を迎えて、道南山岳渓流を彷徨ってきた。数年くらい前までは、夏場のこの時期は足蹴良く山岳渓流に赴いていたが、最近なかなか山岳渓流には、足が向かなくなった。理由はいろいろあるが、やはり単独での釣行ではヒグマの存在が私の中では大きいようである。さて、ゲストを迎えるのは良いとして、最近の道南方面の渓流の情報をほとんど知らない。それで、道南山岳渓流と言えば、屈指のスーパーガイドであるBOB氏に日曜日の水先案内人を依頼する。彼は快く引き受けてくれた。彼との釣行は日曜日となるので、土曜日の釣行をどうしようか思案していた。私はこの日午前中に仕事が入っていたので、Ｙ氏ご夫妻とは、昼過ぎに合流することになる。金曜日はほぼ終日雨であった模様で、Ｙ氏奥様からのメールで、日本海側の山岳渓流はどこも濁りがひどくて釣りにならなかったことを知らされる。昨日の今日では濁りが取れている確証はない。それで、日本海側の山岳渓流は外し、BOB氏ゆかりの宿に比較的近い川を選定し、その近くで合流することを彼女たちに伝えた。

この川は以前から情報はいただいていたが、実際に川に入るのは初めてである。あまり大きな川ではないが、昨日の雨の影響か、水量は幾分多めで乳白色に濁っていた。しかし、釣りにならない状況ではなかったので、遡ることに決めた。入って間もなく25cm位のイワナが釣れた。次のポイントでは、ブラウンが・・。比較的入渓者の少ない渓であるようで、魚影は濃いように感じた。とある落ち込みで、４０クラスのイワナとブラウンが、続けざまにY氏奥様のルアーを追ったがフッキングしなかった。残念がることしきり・・。しばらく時間をおいて、サイドに回り込んでＤコンをキャスト・・、流芯を過ぎたあたりでいきなりロッドがのされる。水面で反転した時にブラウンであるとわかった。ウルトラライトのロッドを使用していたので、ロッドがパットから曲がり、ティップが水中に突き刺さる。トルクフルに走り回るブラウンをロッドしなりとドラグの滑りで抑えつつなんとかランディング・・そこには、朱点が鮮やかな４１ｃｍのブラウンが横たわっていた。それからもポイントごとに反応があり楽しい釣りができた。ただ、おびただしい数の吸血昆虫にはほとほと閉口してしまった。森林香をぶらさげ、市販のスプレー式の虫よけを掛けているのに全く効かないのである。こんなに虫が多いとは知らず、半袖で入渓した私も馬鹿であるが・・・、結局３０か所くらい刺されてしまった。Y氏奥様も服の上から刺されたと言っていたので、ここの吸血昆虫はパワフルであったのだろう（笑）。

夜は、BOB氏ゆかりの宿にて、札幌からHIROSHI氏も駆けつけてくれ、和やかで楽しい宴会となった。翌朝も早いというのに、釣り氏による釣り談義は、夜遅くまで続いた。

翌朝、帰札するというHIROSHI氏をほっといて、我ら４人は巨石の渓へ向かう。巨石までの流程では型の良いヤマメが挨拶してくれた。やがて巨石迎える。大水で流れが変わり、巨石超えのルートも前回とは若干変わったらしい。先頭はもちろんBOB氏。Y氏ご夫妻を間に挟んで、ひたすらBOB氏の後を追う。彼を見失ってしまっては、ルートがわからなくなってしまう・・。所々、良い落ち込みがあって、BOB氏やY氏ご夫妻がロッドを出す。そこからは、良型のイワナが飛び出してきたが、前回ほどの数と型ではなかった。やっとの思いで巨石を超え、上流目指して遡行を続けるが、数こそまあまあであったがサイズが伸びなかった。BOB氏にお聞きすると、やはりここも大雨で大きなイワナは流されてしまったのではと話していた。復路は延々と林道を歩いて戻る。巨石越えと長い林道歩きでかなり足に来ていたが、もう１本本流を遡る。狙いは遡上アメマスである。道南太平洋側の遡上アメマスは、もちろん道東のそれに比べると数も型も比べることはできないが、個体は綺麗で、コンディションは良い。私は、道南のアメマスにも道東とは違った魅力を感じているのである。運良く２本のアメマスからのコンタクトが得られた。私は満足であったが、BOB氏は首をひねる。ここのエリアはヒグマの出没も激しく、あまり人が入っていないはずであるのに魚影が薄いのである。遡上物であるアメマスはともかく、もう少しヤマメやイワナは釣れても良いはず・・。ここもやはり、今年の高温多雨の影響を少なからず受けているようだ。

帰路の林道歩きは、ここも長かった。BOB氏のGPSと地図上からの実測によると、今日１日で１５ｋｍは歩いたらしい。そのうち７ｋｍは間違いなくゴロタ石の連なる河原を遡行しているのである。さらに、朝一には「ファイト！一発！！」の巨石越えもあった。全身がきしんでいる状態であったが、その疲れは心地良いものであった。道南山岳渓流の醍醐味を心行くまで堪能させてくれたBOB氏には心より感謝したい・・。