８月のお盆知床カラフト遠征以来、ほぼ１ヶ月ぶりに土・日が空いた。今週末は道東平野河川で遡上アメマスを狙う予定であった。金曜日の夜出掛けに友人からＴＥＬが入る。彼も私と同じく道東平野河川に出撃する旨の内容であったが、私が出撃予定の川が強烈に濁っているとの情報であった。彼は私にも情報を求めたが、私の知っている情報は先週末、別の友人がやはり道東平野河川を訪れていて、その時の状況を教えて頂いたのが最後でその後新しい情報は持っていなかった。彼は比較的濁りの少ない方の川へ入る予定だと話していた。ここ１週間の天気を思い出していた。道南ではそんなに大きな天気の崩れはなかったはずである。北海道は広大なので道南と道東の天気が違うということは珍しいことではない。でも今週は週末に出撃を予定していたので、道東の天気の推移も抜かりなくチェックしていた。しかし、大雨の日は無かったと記憶している。釧路の師匠に電話で聞いてみようとも思ったが、今更出撃を中止することもできない。まあ、行けばなんとかなるだろう。車は闇の中を峠を越えて夜半には道東道を疾走していた。

この時期の遡上アメマスを狙った道東平野河川での釣りも、ここ数年私の中では年中行事としてデフォルト化している。本当は海から遡上を開始したばかりのコンディションの良いアメマスを狙いたいのだが、アメマスの溯上のタイミングに合わせて出撃なんて・・そんな自分の思惑通り自由気ままに休みを取れる身分ではない。一雨ごとに隊列を組んで遡上するアメマスたちとの巡り合わせは、運とタイミングが勝負となるのである。真夜中に現地に到着した。川の様相が気になる。確か街灯が設置されている橋があったはずと思い探し回った。やっとのことで探し当て、車から降り橋の上から川を覗き込む・・。唖然としてしまった・・。水色が茶色である。しかもかなり増水しているようだ。出がけに友人から頂いた情報に間違いはなかった。まあ、ここまで来て、今更じたばたしてもしょうがないので、とりあえず朝まで仮眠することにした。この状況が朝になっても変わらなければどこかに転戦するしかないだろう。シートを倒してあれこれ考えているうちにいつしか浅い眠りについていたようだ。

携帯のアラームで朝４時半に目が覚める。寝ぼけた身体にコーヒーを流し込み、入渓予定のポイントまで車を走らせた。辺りはうっすらと明るくなってきた頃合いである。川の様相が車窓から見えた時の落胆は大きかった。昨夜の状況となんら変化がなかったのである。昨年も確か濁りの中で釣りをした記憶があるが、濁り方が去年のレベルでは無かった。濁り具合がコーヒー牛乳の色合いを通り越して、茶色いのである。さて、どうしようか・・。フィールド自体をそっくり変えてしまうのも手であったが、ここを目指してきたのであるからやはりここで釣りをしたい。濁り具合が薄らいでいることを期待して、上流部を探ってみることにした。車で移動しながら橋から川を覗き込む。上流域も濁りは無いという状況ではない。下よりはましというレベルである。過去に、ここまで上流域で釣りをしたことがない。アメマスが遡っているかどうかもわからない。とりあえず、とある橋から釣り下ることにした。しばらくの間は反応が無かった。強烈な濁りの中、どこをどうミノーが泳いでいるのか確認もできないまま、それでも瀬を中心に丹念にミノーを流し続けた。どれくらい下がっただろう。相変わらず全く反応がない。今日は駄目か・・との思いが全身を纏い、キャストの集中力も散漫になってきた。とあるポイントで瀬頭に立ってミノーを逆引き・・、ハンドルを回す手を止めた瞬間、突然ガツン！っとミノーをひったくられた。ロッドのティップが水中に突き刺さる。やっときたよ・・！。ジジーッという小気味よいリールのドラグ音を聞きながら、アメマスを寄せる。ＴＳＳのライトアクションのロッドがバッドから曲がる。やっとのことで岸に摺りあげたアメマスは、５０ｕｐの体腔のある遡上アメマスであった。

不思議なものだ・・１本獲れると川の様相が今までとは違って見える。１本出てからは、ポイント毎にアメマスからのコンタクトがあった。同じ濁りの同じ流れではあるのだけど、１本出るまではアメマスがそこにいる気配が感じられなかった。釣れる気がしないのである。ところが１本掛けると、相変わらず、濁りで全く水の中は見えないのだけど、ポイントの下にはアメマスがひしめき合っている状態が脳裏に浮かぶのである。そして、そのイメージ通りにバイトが続く・・。６０ｕｐも数本出た。ポイントはやはり瀬である。深みにもミノーを打ち込んだがあまり反応は良くなかった。濁りが強いので、アメマスが居ても食わないのか、居ないのか判然とはしなかったが・・。午後から師匠と合流して午前中の続きの流域を下った。全く釣れなかったわけではないが、やはり反応は朝の方が良かった。なにはともあれ、朝の川の状況を見た時に、一時はどうなるかと思ったが、この道東平野河川におけるアメマスカーニバルは、当初の目的が達成できて良かった。