極東遠征

11月２日に職場のビックイベントの日程が決まった時から、毎年恒例の極東遠征への対応を迷っていた。この日程決定への調整役は私なので、文句を言うわけにもいかない。おまけに、当日の打ち上げの段取りを上司から仰せつかる。まあ、もともとこのイベントの打ち上げへの参加は、職場の仲間への義理もあるので失礼することにはならないと考えていたし、打ち上げのセッティングだけして、「それじゃあ、さようなら！」というわけにもいかないだろう。それで、極東方面の釣行は今年最後ということで、５日に有給を取得させてもらい、３日朝、空路で極東へ出撃をすることに決めた。数年前からこのフィールドに訪れてみたいという意思を明確にしていたYUN氏に連絡、また、同じく食指を動かしていたＡＫＡ氏もお誘いした。ただ、私は前述のイベントの打ち上げの関係で金曜夜からの出撃はできない。それで、水先案内人をムラ氏にお願いしたのだ。

前日まで、釧路界隈で釣りをしていた神奈川の友人、藪の高橋氏もこの日は極東に足を伸ばしているはずである。そして、出張を繰り上げて帰還した西別川氏も馳せ参じているようだ。大集合である。９時前に釧路空港に到着した私は、おもむろに携帯の電源を入れ、情報を仕入れるために先発隊の仲間にメールを送る。仲間からの返信は、すでに６０ｕｐも数本上がっているという実に刺激的で景気の良いものであった。まあ、焦っても仕方が無い。ここからでは、道東の端っこのフィールドまでは、レンタカーを走らせても２時間以上は掛かるだろう。ついつい、アクセルを踏む力が強くなってしまうのを抑えて、極東に向けて車を走らせる。現地にやっと到着したのは１１時を過ぎる頃であった。先発隊の仲間達は、ちょっと食いが悪くなったとのことで、休憩モードであった。今朝方、河口は閉じていたらしい。それで、西別川氏が今朝、足で砂を削り、工事を施した模様だ。最初はちょろちょろ流れの状態であった川の水が、まさしく堰を切ったように怒涛の勢いで流れ始めたそうだ。満水状態であった河口の水が、一気に海に流れ出ていく光景は、見ていて壮観であった。さっそく、出口付近で竿を振ると数等目に反応がある。釣れてきたアメマスは４０ｃｍは無いだろう。しばらくは、そんなアメマス数匹と戯れていた。仲間達は昼食を取りに車に戻った。出遅れた私は一人残り釣り続けた。そして、数十分後・・このフィールドの「異変」は静かに、そして唐突にやってきたように思う。河口域から、ライズとボイルの波紋が大きく広がり、その数はどんどん増えていった。その水面の変化が激しく、大きく上流側に移動していくのだ。どうやらアメマスの溯上ラッシュが始まったらしい。その数たるや壮絶なものであった。今朝方まで河口は閉じていた。おそらく、河口の前の海には、おびただしい数のアメマスたちが川を遡るに遡れなくて、ひしめき合っていたのだろう。そして、堰が切れた・・・・。満を持したとばかり、アメマスたちは一気に遡ってきたのである。

長さが５ｍほどの水路が、アメマスで溢れて返っている。ライズやボイルが水面全体を覆いつくす。それからは、ほぼワンキャスト、ワンフィッシュ状態でアメマスからのコンタクトがあった。最初のうち釣れていたサイズは、アベレージ４５ｃｍくらいであったが、ここに到着した時に釣り上げた体色がブラウン系のものとは違い、グリーンパックの白斑鮮やかなシルバーメタリックのアメマスである。それは、そうだろう。ついさっきまで、こいつらは海にいたのだから・・・。車の中で、私の釣りの様子を観察していた仲間達が、勇んで戻ってきた。そして、このポイントを取り囲むようにロッドを振る。何本のアメマスを手にしたのかはよく覚えていない。型も６０ＵＰが交じり始めた。やはり、この溯上群の中にはかなりの大物が混じっているようだ。海との境あたりで釣っていた釣り士に７７ｃｍのアメマスが掛かったらしい。そして夕刻までの間、至福の時間を仲間達と共有できたのである。

今日の最終便で東京に帰る予定の藪の高橋氏、釧路に戻る西別川氏と別れて、ＹＵＮ氏、ＡＫＡ氏、ムラ氏とともに根室の宿に移動した。その夜は、根室産の花咲ガニを肴においしい酒と楽しい釣り談義で盛り上がったのは言うまでも無い。本日、我々が帰る時にも、相変らずアメマスは遡り続けていたので、明日はさらに状況は良くなるはずである・・・と確信しつつ、期待に胸を膨らませて、その日は眠りについた。ところが・・・釣りは異なものである。前日にあれだけ反応が良かったアメマスたちは、翌日には押し黙ってしまった。相変らず水路の中でひしめき合ってはいるのだけれど、ルアーにもフライにもほとんど反応しない厳しい状況であった。考えてみれば、昨日は満潮時の海水が川側に押し上げている時の釣果である。今は、干潮の真っ最中・・。アメマスたちは海水から淡水への急激な環境の変化で、真水に慣れようと必死の状態であったのかもしれない。だから、今朝は食い気が無かったのかもしれない。翌週辺りに、河口域全体に広がって楽しい釣りができるような気がする。こんな時には、本当に地の利を生かせる地元に住んでいる釣り人が、実にうらやましいよね・・（笑）。